試験車両 index
 E954、955形式新幹線試験電車(FASTECH360) 360km/h営業運転を目指した新幹線を開発するための試験電車(JR東日本)
 E993系次世代通勤形電車試作車「ACトレイン」 E231系の後継車両開発のための試作電車(JR東日本)
 GCT01軌間可変電車「フリーゲージトレイン」  世界初の電車式軌間可変電車
 MLX01形山梨リニア実験線車両  リニア実用化試験用車両
 300X新幹線試験電車(955形)  300系新幹線後継車両の開発用試験車両(JR東海)
 TRY-Z(E991系在来線試験電車)   在来線車両の更なる技術開発用車両(JR東日本)
 STAR21(952・953形式新幹線試験電車)   新幹線車両の更なる技術開発用車両(JR東日本)
 WIN350(500系新幹線試験電車)  300km/h運転用新幹線電車開発用(JR西日本)
 962形新幹線試作電車  200系の量産先行試作車両(国鉄)
 961形新幹線試作電車  全国整備新幹線網対応試作車両(国鉄)
 951形高速試験電車  0系の次の高速新幹線開発用車両(国鉄)
 A、B編成新幹線試作車  0系の量産先行試作車両(国鉄)


・E954、955形式新幹線試験電車(FASTECH360) E954詳細仕様 E955詳細仕様

  平成17年6月にE954、平成18年3月にE955が登場。JR東日本が技術上の目標を360km/h営業運転として、高速性、信頼性、環境適合性、快適性などのあらゆる面で世界最高水準を目指した新幹線を開発するための試験電車。FASTECHは、FASt TECHnology(高速技術)を短縮した造語。2編成あり、E954は新幹線専用でE955は新在直通用である。
  この電車は試験車であり、約3年間の各種走行試験の成果を評価、内容を取捨選択して新たに量産先行電車を製作することになるので、新しい車両の営業運転開始は新青森駅開業の2011年頃としている。
・E954形式(新幹線専用8両編成 6M2T 2両1ユニット1C4M) 「FASTECH360S」 平成17年6月25日走行試験開始 SはSinkansen
・E955形式(新在直通用6両編成 6M 但し先頭車の前位台車は付随台車) 「FASTECH360Z」 平成18年4月6日走行試験開始 ZはZairaisen

  E954形式8両編成試験電車の技術的特徴は次のとおりである。
(1)走行速度の向上
 ・主回路機器の小型高出力化等。
試験電車の性能は最高速度405km/h。新開発主回路機器を3方式搭載して比較試験。永久磁石同期電動機も中間の第2ユニットに採用 。車両情報制御システムにより編成全体の加速力やブレーキ力を確保する編成トルク・ブレーキ制御の採用。
 ・高速集電性能の向上
多分割すり板付のパンタグラフを搭載するとともに架線設備も軽量で高張力なものに改良(錫入り銅合金170mm2 14.7kNからCr・Zr入り銅合金110mm2 19.6kNへ)。
(2)信頼性を確保
 ・地震時の安全性確保
非常ブレーキ性能を大幅に向上し、鉄道車両では初めて空気抵抗増加装置を搭載。
 ・走行に関わる部品の信頼性確保
台車は全て高速対応用の新設計として、高信頼性低騒音の駆動装置を新たに開発(はすば歯車から軸方向の力が打ち消されるやまば歯車に変更)。
 ・雪害の防止
試験電車では台車周辺の車体形状を工夫して気流を改善。ヒータによる融雪で着雪しにくい構造。
(3)環境への適合性
 ・騒音の抑制
1編成当たりのパンタグラフを2基から1基に削減。新開発低騒音パンタグラフや遮音板を搭載。 台車や車体の連結部分をカバーで覆うなどして車体各部を平滑化。車体下部に吸音材を取り付け。
 ・トンネル微気圧波の抑制
最適化した2種類の先頭形状を採用して比較。車内快適性を損なわない範囲で車休断面積を縮小(E2の11.2m2から10.8m2へ)。 1号車(東京方):Stream-line(流れるような)と8号車(盛岡方):Arrow-line(矢のような)は反転交換して試験可能。
(4)快適性を向上
 ・乗り心地の向上
台車の乗り心地特性改良、国内初の電磁式動揺防止装置(アクティブサスペンション)を全車両に搭載(E2系1000番台は空気式を先頭車に搭載)。
 ・車内静粛性の向上
車体の床、窓、壁などを遮音性の高い構造とするとともに、走行装置や電気機器の低騒音化。
 ・曲線通過時の乗り心地向上
曲線を高速で通過する際の遠心力を軽減するために、空気ばねストローク式の車体傾斜装置を搭載。最大傾斜角2度でR4000を330km/h、R6000を360km/hで走行可能。

  E955形式6編成試験電車もほぼ同様であるが、新在直通仕様なので車体寸法はE3系「こまち」と同じである。しかし、先頭長延伸等による定員減を避けるため、車体長を中間車で20.0mから21.0mに、先頭車でE3系の22.825mから24.1mに延長している。車体高さも3.65mと370mm低くして新幹線の高さと合わせた。台車の軸距も高速走行安定性の面から2250mmからE954と同じ2500mmに延ばし、在来線急曲線の横圧低減のためヨーダンパを切換方式とした。
  また、全電動車の6両編成だが、先頭車両の前位台車が付随台車となっているため先頭車は0.5M0.5Tとなっている。この片台車の主電動機は隣の車両の主変換装置から駆動されており、E955-2とE955-5の主変換装置は6台車を駆動する1C6Mとなっている。

  E954形は平成17年6月25日から、E955形は平成18年4月6日から東北新幹線の仙台-北上間でまず基本的な車両性能試験を実施、その後速度を向上させ、走行安定性や環境性能の確認を行い、次に高速すれ違い、併結走行試験等を平成19年度一杯まで行うことになっている。E955形は平成18年7月19日未明から秋田新幹線区間で走行試験を開始した。
  ATCの最高速度段は365km/hである。盛岡-八戸間の高速走行試験では4000mの曲線を349km/hで走行した。



 
高速走行試験区間と計画ランカーブ


・E993系次世代通勤形電車試作車「ACトレイン(Advanced Commuter Train)」

 平成14年登場。JR東日本。E231系の後継車両開発のための試作電車で、平成14年2月初めから川越線南古谷−川越間で走行試験を実施、2〜3年後の実用化をめざす。
  連接台車の5両1編成で、車両長は1、5号車が16.5m、2〜4号車が13.4mと、連接車体のために通常より3.5〜6.4m程度短い。 乗降時の利便性を向上するための車両側収納式スロープやステップを設置したりしてユニバーサルデザインやエコロジーにも考慮している。
  構造的には連接台車、直接駆動主電動機、ダブルスキンパネル車体、外づり扉、バリアフリー対策、IT(情報技術)を駆使した各種の車内情報案内サービスなどが主な特徴である。
  連接台車方式は、初期の小田急電鉄の特急用車両やフランスのTGVなどで採用されている方式で、車体が短くなるが編成当たりの台車、動力軸数の削減に伴う車体軽量化、曲線区間での安定走行などに効果があるといわれる。 国内ではメンテナンス上の問題や走行性能が従来タイプと差がないなどから新規に採用する例は一般鉄道では見られておらず、曲線通過性能向上がポイントか。
  直接駆動主電動機(DDM:Direct Drive Motor)は、永久磁石を用いた同期電動機で、軌間可変電車に最初に使われた。ギアを介さず車輪を動かすため、騒音低減が可能で、密閉式モーターのためメンテナンスコストが抑えられる。
  ダブルスキンパネル車体は、二枚の板の間に補強材を挟んだ構造で、部品点数の削減による軽量化や内装工事などのメンテナンス軽減などが可能になる。 1、2号車は最近実績のあるアルミニウムであるが、3〜5号車に初めてステンレスによるダブルスキンパネルを採用した。
  バリアフリー対策等では、車体床中からでるスロープ板や収納式ステップによって段差、隙間を解消したり、聴覚障害者の方のために、チャイムの他、「閉」表示灯を付けた。車体間は幅広貫通口(1800mm)とし、開閉部、出入り口、手すり等を目立つように配色している。
  戸袋不要の外づり扉は、車体側面の外側に扉を設置するもので、車内幅は幅広と称したE231系に比べて更に8cm広くなる。10両ベースの1編成(ACトレンは14両で換算)の混雑率は概ね4%緩和されるという。
 IT(情報技術)による車内情報案内サービスとしては、4号車には地上との情報送受信装置、サーバーを設けて無線LAN方式によるアクセスポイントを開設。特急車両を想定してインターネット対応のパソコン、イーサーネット接続口などを設けた座席(8席)のほか、5号車に は大型LCD(液晶ディスプレー)をドア上、横に設置、宙づり広告スペ−スとして活用する。天井付近ではLED(発光ダイオード)表示器による運行情報や列車案内などを提供する。

・GCT01軌間可変電車「フリーゲージトレイン」

  平成6年度から運輸省の計画に基づき鉄道公団が鉄道総研に委託して開発している軌間可変台車を持つ試験電車。 軌間1,067mmと1,435mm間を直通運転が可能。
  設計最高速度 新幹線区間300km/h、在来線区間130km/h。
  アルミ合金製20.5m(先頭車は23.075m)長車体の3両編成であり、両端車両にパンタグラフを搭載する。 台車は、独立車輪タイプの車輪一体形同期電動機による直接駆動方式の舵取り機構付きで枕はりあり、なしの2種類(A方式)、 従来タイプの平行カルダン駆動ボルスタレス台車1種類(B方式)の計3種類ある。軌間変換機構はロッキングブロック方式である。
  平成11年1月にJR西日本の山陰線米子−安来間で100km/hまでの狭軌走行試験、同年4月以降はアメリカのコロラド州にあるプエブロ試験線で広軌での速度向上、耐久性、軌間変換試験が行われた。
  右の写真はプエブロ試験線を走行する試験電車。最初2両で、平成12年5月からは平行カルダン台車の中間車が投入されて3両編成になった。
  プエブロ試験線での試験は平成13年1月まで実施され、A方式台車で概ね60万km、B方式台車で概ね23万kmの走行試験が行われ、最高速度246km/hを達成した。同時に行われた軌間変換試験では2000回以上の変換回数を数えている。 平成13年3月末には日本に持ち帰られ、解体検査及び国内走行試験に向けた改造が行われた。
  同年秋に国内走行試験を実施するため、JR西日本の新下関駅にある新幹線保守基地に軌間変換装置が、JR九州の小倉工場に検査・留置線が新たに設けられた。
  平成13年11月3日の夜から4日の朝にかけて、JR九州の日豊本線西小倉−城野間で在来線走行試験が開始された。その後、横圧の発生や輪重のアンバランス等の問題から走行試験は一時中断されていたが、平成14年10月から再会され、別府〜大分間では主に曲線通過性能の、西小倉〜新田原間では高速性能の確認が行われ、11月22日の夜間走行で130km/hが達成された。
  平成14年8月8日には軌間可変台車電車の開発を目的とした「フリーゲージトレイン技術研究組合」が発足、より営業車に近い二次試験車両の開発が進められている。

・MLX01形リニア車両

  平成9年登場。JR東海、JR総研、鉄道公団共同で山梨リニア実験線で進めている500km/h以上の運転を目指す 超電導磁気浮上式鉄道開発のためのリニア試験車両で、高速すれ違い試験等を行うため2編成ある。設計最高速度は550km/h。 平成9年12月24日、550km/hの 世界最高記録(無人走行)を達成した。
  地上一次シンクロナス駆動、誘導反発磁気浮上(浮上高さ10cm)方式及び誘導反発ヌルフラックス磁気案内方式。
  車両はダブルカスプ形とエアロウエッジ形の2種類の先頭形状を持ち、アルミ合金製薄板のセミモノコック構造の軽量構体。 3両と4両編成だが、組み替えにより最大5両編成にすることができる。
  ブレーキは電力回生ブレーキを常用とし、緊急時のバックアップとして車輪ディスクブレーキ及び空力ブレーキ(1基の投影面積3.7uを各車)を備える。
  台車はアルミ合金製台車枠で、支持脚装置は低速走行時の車両支持と異常時は最高速度からでも着地走行可能。
  平成11年2月3日から5両編成に組み替えて、長編成の走行安定性、走行抵抗、加減速性能、定員270人を乗せた積車走行試験等を試験する。
第1編成平成7年7月車両基地へ、平成8年12月2日総合調整試験開始、平成9年2月17日自力走行開始、 平成9年4月3日から走行試験、5月30日から浮上走行試験開始。
3車体4台車の連接。車上ガスタービン発電電源。
第2編成平成9年10月車両基地へ、平成10年5月から走行試験開始。
4車体5台車の連接。誘導集電電源。長尺中間車両。超電導磁石(SCM)弾性支持、アクティブ振動制御システム台車。

  平成11年11月16日13時08分と13時41分に高速すれ違い試験において「相対速度1,000km/h」を達成した。いずれもA編成(北線:東向き走行)546km/h、B編成(南線:西向き走行)457km/hで小形山橋りょう付近ですれ違ったもので、特に問題はなかった。

・300X新幹線試験電車(955形)

  平成7年登場。JR東海。300系の後継となる高速鉄道の理想的なシステムを研究開発する目的で開発された6両(6M)編成の高速試験用電車。最高速度350Km/h以上。4種類の構体構造、2種類の先頭形状(カスプ、ラウンドエッジ)、各種条件設定のできる台車・パンタグラフ、高速走行用の力行・ブレーキ関係機器等で構成され、平成7年1月から走行試験が開始された。平成14年1月15〜16に最終運行となり、試験走行終了。 その成果は700系、700N系に生かされている。
  VVVFインバータ制御、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ。
  高車体支持点(空気バネ支持高さ:レール面上1700mm)、作動シリンダによる強制車体傾斜、振動アクティブ制御等の特徴を持つボルスタレス台車で、軸距3000mm、車輪径910mm。車体間ダンパ前後4左右2。
  平成8年7月26日未明、米原−京都間で国内車輪・レール系で最高の443.0Km/hを達成した。
  平成14年1月まで走行していたがその後廃車になり、カスプ形先頭車が2月25日鉄道総研に譲渡され、米原の風洞技術センターに平成14年7月26日から保存されている。

・TRY-Z(E991系在来線交直流試験電車)

  平成6年登場。JR東日本。在来線の理想的な鉄道システムを実現するために、究極の技術開発に挑戦する3両(2M1T)編成の試験電車。車両設計最高速度200Km/h。アルミ合金の3種類の構体構造のほか台車、制御方式、出入口構造等で種類の異なる方式を採用し比較できるようにしている。編成に1つのシングルアームパンタ。 DC1500V/AC25000 50Hz対応。
  高応答性油圧ブレーキ、レールブレーキ、アクティブ動揺制御、強制車体傾斜、軽量化、車内、外騒音対策、良好な室内居住性、安全対策、保守の省力化等に着目している。
  平成6年度以降、常磐線や中央線で試験を行っていたが、平成11年3月27日に廃車された。

・952・953形式新幹線試験電車(STAR21)

  平成4年登場。JR東日本。騒音、微気圧波、地盤振動等の低減等環境対策を更に進めるために製作された車両。最高運転速度350km/h。 アルミ合金製車体9両編成で、非連接車25m長車体4両(2M2T)を952形式、連接車18.5m長車体5両(連接台車のみM)を953形式としている。 連接車体、徹底した軽量化(連接車の軸重8t)等各種環境対策等に特徴。 ボルスタレス台車、パンタグラフ、制御装置等で種類の異なる方式を採用し比較できるようにしている。回生ブレーキ併用VVVFインバータ制御(GTO)。
  平成4年3月下旬から仙台〜北上間で走行試験を始め、平成5年12月21日に上越新幹線燕三条付近で最高速度425km/hを達成した。
  廃車後、先頭車が鉄道総研に引き取られ、米原の風洞技術センターに保存されている。

・WIN350(500系新幹線試験電車)

  平成4年登場。JR西日本。山陽新幹線で350km/h営業運転実現に向けた試験電車で、アルミ合金製6両(6M)編成。
  営業車両でないため騒音対策等の試験仮設品取付が簡単に行えるようにしたのと同時に営業列車の製作を短期間で行うため 車両部品等は営業列車で使用することも考慮して容量、大きさを決定した。特に高速走行での技術的問題を全てクリアするようにした。
  均衡速度385km/hという高速性能、翼形パンタグラフ、車体姿勢制御装置、アクティブサスペンション等に特徴。 ボルスタレス台車(特に、軸箱支持装置)、パンタグラフ等で種類の異なる方式を採用し比較できるようにしている。
  平成4年4月登場、6月から走行試験を開始し、平成4年8月、小郡−新下関間で 350.4km/hの最高速度を達成、その後長期耐久試験を実施し、平成8年5月25日最終運用を行い、末に勇退。先頭車が平成10年10月に鉄道総研に引き取られ、米原の風洞技術センターに保存されている。

・962形新幹線試作電車

  国鉄時代の昭和54年に東北・上越新幹線用200系量産車の先行試作車両として東北新幹線の先行走行試験試験区間であった 小山試験線に投入された6両(6M)編成の新幹線電車で、アルミ合金ボディマウント構造、サイリスタ位相制御、耐寒耐雪、 各種比較用座席構造等を採用し、騒音振動対策等各種試験の成果は200系量産車に反映された。
  3列側は当時の椅子ではスペースの関係から回転できないため、試験時のアンケート結果から中心を境に反対を向いて座る「集団離反型」が採用されたが、開業後は不評で、その後の100系以降では3列側も回転できるように改良された。
  車体下面が平滑なボディマウント構造のためか、走行抵抗が想定(0系)に比較して2〜3割少なかったため、210km/h仕様にもかかわらず、小山の速度向上試験では試験の終了する1月前の昭和55年5月に最高261.5km/hを達成した。
  昭和55年11月には上越新幹線長岡〜新潟間の総合監査に投入され、その後12月16日からは同新潟車両基地〜長岡間で始まった雪害対策試験に使用された。
  東北・上越新幹線開業後の昭和58年1月に921−41軌道検測車1両を組み込み、925形電気軌道総合試験車(S2編成)に改造された。この編成はその後も、同年9月からの240km/h長期走行試験、昭和59年10月からの260km/h高速走行試験に使用され、昭和60年10月には小山時代に出した261.5km/hを上回る272km/hを達成、これらの高速走行試験や長期走行試験時に行われた長波長軌道狂い設定試験等を通じて新幹線の高速走行性能向上に大きく寄与した。
  この成果と、東北・上越のATき電に対応したパンタ半減・高圧母線引き通しによる騒音減少効果等と合わせ、昭和60年3月の上野開業で一部"やまびこ"編成の240km/h運転が始まり、東海道新幹線開業の昭和39年以来21年ぶりに新幹線の速度向上が行われた。
  その後、ドクターイエローとして長く活躍していたが、老朽化もあり、平成15年にその使命をイーストアイに譲って、廃車解体されている。
  なお、開業前にもう1編成の925電気軌道総合試験車(S1編成)が投入され、東北新幹線一関〜北上間を中心に雪害対策試験等に供されたが、やはり平成14年4月に軌道検測車を除いて廃車解体された。

・961形新幹線試作電車

  国鉄時代の昭和48年に全国新幹線網対応として製作された6両(6M)編成の新幹線電車で、最高速度250km/h。アルミ合金ボディマウント構造、50/60Hz両周波数対応、自動運転用ATO、ばね下重量軽減DT9013中空軸台車等最新の技術を採用、アコモデーションも寝台、食堂等を備えハイグレードな新幹線電車であったが、労使間問題等から高速試験走行ができないまま昭和53年に浜松工場で全般検査、改造を施され、東北新幹線の先行走行試験区間であった小山試験線(延長42.8km、昭和53年8月7日〜昭和55年6月試験実施)に移された。
  この試験線は、騒音・振動等の環境対策、保安度向上・異常時対策、高速走行性能等の新幹線の将来に備えた性能確認等を目的に設けられた。
  そこでは、東北新幹線「200系」の先行試作車962形(後に925形電気試験車[S2]化改造された)とともに騒音対策試験等各種の試験に使用され、 速度向上試験では319km/hの最高速度を達成。平成3年2月に300系試作車(325.7km)に抜かれるまで新幹線の最高速度記録であった。
  平成2年に廃車となり、現在は、200系の塗色とされた先頭車2両が利府にあるJR東日本の仙台総合車両所の門側の前庭に保存展示されている。

・951形高速試験電車

  国鉄時代の昭和44年3月に山陽新幹線新大阪〜岡山間延長を控えて次の高速車両開発のために製作された2両編成(2M)の車両。最高速度250km/h。 アルミ合金ボディマウント構造、サイリスタ位相制御、渦電流式レールブレーキ等を新たに採用した。速度向上試験中まくら木破損が発生し、台車のバネ下重量と著大輪重発生の関係が研究されるきっかけとなった。
  中空軸タイプのDT9012台車が開発され、高速走行試験では、昭和47年2月24日に286km/hの最高速度を達成している。昭和48年に試験が終了し、昭和55年廃車後は国鉄鉄道技術研究所に引き取られ、車両試験台での試験等に使用された。JR化後1両が国立市に寄贈され、(財)鉄道総合技術研究所入口の外近くに展示されている。

・ A、B編成新幹線試作車

  国鉄時代の昭和37年に東海道新幹線用の車両を試験するために先行完成した鴨宮モデル線(綾瀬−鴨宮37km)という試験線に投入された車両。2両(2M)のA編成(1001,1002)と4両(4M)のB編成(1003,1004,1005,1006)の2編成を使い、様々な試験が行われ、トンネル突入時の耳つん対策等その成果が0系量産車両に反映された。
  昭和37年6月から両編成とも走行試験を開始し、B編成は高速走行試験で昭和38年3月30日に256km/hの最高速度を達成している。
  昭和39年10月1日の東海道新幹線開業を控え、A編成は8月に救援車の941形に、B編成は9月に922形電気試験車(T1編成)に浜松工場で改造された。941はその後出番もなく、また、T1編成は昭和49年10月の922-11(T2編成)投入に伴い引退し、いずれも昭和50年末に廃車、昭和51年に浜松工場の廃車解体設備稼働開始時に解体された。