9. 新幹線電車編成の機能的な特徴と変遷

1. 現在の新幹線電車編成の概略仕様

  昭和39年に登場した0系新幹線電車以来、200、100系と続き、JR発足後は300、400、500、700、E1、E2、E3、E4系と種類が大幅に増えています。
  車両をほぼ登場順に並べてみますと次の表のようになります。

車両形式開発 特徴主な編成 ユニット構成電動機種別 電動機定格編成出力
0系国鉄 最初の新幹線電車16M MM'直流 185kW11,840kW
200系国鉄 最初の東北上越新幹線電車12M MM'直流 230kW11040kW
100系国鉄 最初に付随車、2階建て車を導入12M4T MM'直流 230kW11040kW
300系JR東海 最初にVVVFインバータ制御採用10M6T MTPM3相交流 300kW12,000kW
400系JR東 最初の新在直通新幹線電車6M1T MM'直流 210kW5,040kW
E1JR東 最初の全2階建て新幹線電車6M6T MM'3相交流 410kW9,840kW
500系JR西 世界最高速度300km/h運転実現 16MM'M1MpM2 3相交流285kW 18,240kW
E2JR東 急勾配・異周波数対応の北陸新幹線電車6M2T M1M2 3相交流300kW 7,200kW
E3JR東 VVVF制御第2世代新在直通新幹線電車 4M1TM1M2 3相交流300kW 4,800kW
E4系JR東 第2世代全2階建て新幹線電車4M4T TM1M2T 3相交流420kW 6,720kW
700系JR東海・西 最新の「のぞみ」12M4T M1M'M2T 3相交流275kW 13,200kW
800系JR 九州新幹線「つばめ」4M M1M2 3相交流

2. 代表的な新幹線電車編成の編成一覧

  次に代表的な新幹線の編成を示します。機器の行は主回路の代表的なもののみを記載しており、実際はざまざまな 機器が床下等に搭載されています。

○東海道山陽新幹線

編 成 1234 5678 91011 121314 1516
0系ひかり
   MT構成 McM'M M' MBM' MA M'DMS M'SM7 M'MM' M M'c
機器 CS・ReTr・RfCS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf CS・ReTr・Rf CS・ReTr・RfCS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf CS・ReTr・Rf
100系ひかり
   MT構成 TcM'M M' MM'MTDD TSDM'S MM'M M' MT'c
機器  Tr・RfCS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf CS・Re   Tr・RfCS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf CS・Re 
100N系
   MT構成 McM'M M' MM'TSD1 TDD TSD2T'SD M7M' MM' MM'c
機器 CS・ReTr・RfCS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf      CS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf CS・ReTr・Rf
300系のぞみ
   MT構成 TcM1TPW M2M1W TPM2K M1STPS M2SM1H TP M2WM1 TPWM2c
機器  CITr CICITr CICITr CICITr CICITr CI
500系のぞみ
   MT構成 McM1MP M2M'M1 MPK M2SMS M1SMPKH M2 M'M1MP M2c
機器  CI・CITr CI・CI CI・CI TrCI・CI  CI・CITr CI・CI CI・CI TrCI・CI
700系のぞみ
   MT構成 TcM2M'W M1M1W M'M2K T'SS M2SM'H M1 M1WM' M2WT'c
機器  CI・CITr CICITr CI・CI   CI・CITr CICITr CI・CI 

○東北・上越・北陸新幹線

編 成 1234 5678 91011 12
200系
   MT構成 McM'M M' MKM' MM'MB M'MS M'c
機器 CS・ReTr・RfCS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf CS・ReTr・RfCS・Re Tr・RfCS・ReTr・Rf
E1系
   MT構成 T1cM1M2 T1T2M1 M2TPK PSM1S M2ST2c
機器  Tr・CICI   Tr・CI CI   Tr・CICI 
編 成 1 2 3 4 5678
E2系
   MT構成 T1cM2M1 M2M1K M2 M1S T2c
機器 Tr・CICITr・CI CITr・CICI
E4系
   MT構成 TcM1M2TTkMp MsTpsc
機器 2CITr・2CI 2CI Tr・2CI

○秋田・山形新幹線

山形新幹線<つばさ>
編 成 123 4567
400系
   MT構成 MSCM'2 MM'2T M2 M'c
機器 CS ReTr RfCS Re Tr Rf CS Re Tr Rf
E3系1000番台
   MT構成 M1SCM2T1M2T2 M1M2c
機器 CITr CI Tr CI Tr CICI

秋田新幹線<こまち>
編 成 1 2 3 4 5 6
E3系
   MT構成 M1SCM2T1T2 M1M2c
機器 CITr CI  Tr CICI

○九州新幹線

九州新幹線<つばさ>
編 成 123456
800系
   MT構成 MwcMpM2wM2 MpwMc
機器CITr 2CICITr2CI

3. 新幹線電車編成の特徴と変遷

  これらの編成の機能的な面での特徴と変遷についてまとめてみました。

○M車とT車
  M車は主制御装置または主変換装置を持っているモーター付きの車両で自車及びユニット構成の場合は他車も制御し、 M'はそのM車から制御を受けるモーター付きの車両です。M1、M2はそれぞれ主変換装置を持って 自車及びユニット構成の場合は他車も制御するモーター付きの車両です。T車は付随車で、モーターは持っていません。
  M車系はモーターを持っているので、ブレーキ時にはそれを発電機として使用して電気ブレーキが使えます。ディスクブレーキも 持っていますが発電ブレーキが優先的に動作するようになっているためディスクやブレーキライニングの摩耗が少なくて済みます。電力回生ブレーキも可能です。
  T車はモーター等の機器がないため一般に軽く、車両製作費も安いので車両性能が許せる限り編成に組み込むようになっていますが、 M車の機器を一部T車に移して重量を平均化するためにも使われます。300系の1ユニットがMTPMとなっているのはこのような考えからです。 T車のブレーキはディスクブレーキ(機械式、渦電流式)です。

○ユニット構成
  1ユニットとは、駆動機構として最小の機能を持つ単位のことで、たとえば0系はM+M'が1つのユニットを構成しており、 Mに主制御装置、M'にパンタグラフと主変圧器を分けあって持つというようなことです。その他補助電源装置、電動圧縮機等の機器類は 各車の重量バランスを配慮して配分されますが、当然モーターはM系の各車に付いています。16両ですから8ユニットあることになります。 ある車両のモーター等の機器が故障した場合には、その車両を含む1ユニット2両を開放(T車的な扱いにする)することで、 編成の能力は14/16になりますが走行は可能です。
  編成が短い場合は1ユニット開放の所要性能に対する影響が大きくなるので、故障場所にもよりますが1両単位、台車単位で開放できる ようにしているようです。さすがに新幹線ではありませんが在来線電車では1両で全ての機能を持つ1両ユニット?方式も結構あります。
  300系以降の16両編成の車両は、300系がM+TP+M、500系がM'+M1+Mp+M2、700系がM1+M'+M2+Tと1通りではありません。モーターのないT車もユニットに組み込まれています。 全2階建て8両編成の新MaxのE4系はT+M1+M2+Tの構成になっています。
  4両編成のような短編成ではこのようなT車を組み合わせたようなユニット構成は出力、故障時対応等の関係から難しく、MM'、またはM1M2構成にならざるを得ないと思われます。

○電動機の種類
  直流電動機を使用している車両は、架線の単相交流25000Vを変圧器で降圧後、整流装置で直流にして直流電動機に電気を 供給していますが、交流電動機を使用している300系以降(400系は直流電動機)は、架線電源を変圧器で降圧後、コンバータ(整流器)で一旦直流にしてそれを更にインバータ(逆変換器)で再度VVVF(可変電圧可変周波数)制御を行い電動機に交流電気を供給しています。
  直流電動機は整流子という部品が必要で、保守、回転数制限等の問題がありましたが、VVVFインバータ制御方式が確立して以降は、小型軽量で保守のあまりかからない3相交流誘導電動機駆動方式が一般になっています。

○パンタグラフと高圧母線引き通し
  0系、200系、100系はMM'の1ユニットに1つずつパンタグラフがあり、その高圧回路はそれぞれ独立していましたが、 新幹線の210km/hを超える高速運転化に伴い全体騒音のに占める集電系騒音、特に速度の影響の大きいパンタグラフ空力音が問題になり、 パンタカバーの対策と合わせてパンタグラフの数を減らす対策が検討されました。パンタグラフをなくすとそのユニットに 架線からの電気を供給することが出来なくなるため、他の車両から電気を供給することになり、このためにL形ケーブルヘッド等を開発して 実用化されたのが「高圧母線引き通し」です。
  パンタグラフの数が減れば1パンタグラフ当たりの集電電流が増え、すり板の摩耗も増えますが、高圧母線を編成に引き通すことにより あるパンタグラフが離線しても他のパンタグラフは集電しているためバチバチという夜目にも美しい?スパークが減り、 スパーク音、すり板摩耗減につながりました。
  最低は1つで良いわけですが、2つあれば万一1つが不具合になってもそれを下げて走行できること、前項の離線防止の観点から 編成で2個が標準になっているようです。2個のパンタグラフの位置はユニット構成だけでなく編成から見てパンタグラフ空力音、 離線等の最も少なくなることを考慮して最適な位置を決定しているようです。
  東海道新幹線は最初、BT(BoosterTransformer)き電方式で建設されたため、高圧母線を引き通すとセクション間を 短絡してしまうため母線引き通しは出来ませんでしたが、き電方式改良工事を進め、平成3年3月のAT(AutoTransformer)き電開始以降 母線引き通しによるパンタグラフ削減が可能になりました。

4. 編成の組み合わせ

東海道・山陽新幹線 東北新幹線 上越・北陸新幹線 九州新幹線
のぞみ 700系16両はやて・こまち E2系10両+E3系6両 MaxときE4系8両+E4系8両 つばめ 800系6両
500系16両はやて E2系10両+E3系6両 E4系8両  
ひかり 700系16両 E2系10両 E1系12両
300系16両 Maxやまびこ E4系8両+E4系8両 とき 200系10両
100系16両 E4系8両 MaxたにがわE4系8両+E4系8両
ひかりRailStar700系8両 Maxやまびこ・つばさ E4系8両+400(E3)系7両 E1系12両
こだま700系16両 やまびこ E2系10両+E3系6両 E4系8両
300系16両 200系10両 たにがわ 200系10両
100系16両 つばさ 400(E3)7両 あさま E2系8両
700系RailStar8両 Maxなすの E4系8両+E4系8両  
0系6両 E4系8両
100系4両 なすの E4系8両+400(E3)系7両
  E4系8両+400(E3)系7両
200系10両

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