鉄総第49号の2
 昭和50年1月30日
陸運局長殿
鉄道監督局長


地下鉄道の火災対策の基準について

  地下鉄道の火災対策の基準について、別紙のとおり定めたので、下記の事項に留意の上、管下地方鉄道事業者を指導されたい。




1 この基準は、地下駅及び当該地下駅に接続するトンネルに対し適用する。
2 地下鉄道を新設する場合には、この基準に従つて整備することとし、既設の地下鉄道についても、早期にこの基準に適合するよう改善することとする。
 
別紙
地下鉄道の火災対策の基準
1 建造物の不燃化
  地下にある建造物は、原則として、不燃化すること。
2 防災管理室の整備 
  駅には、情報の収集、連絡及び命令の伝達、旅客への案内放送並びに防火シャッター等の監視及び制御を行う係員が常時勤務する防災管理室を設けること。
3 警報設備、通報設備、避難誘導設備等の整備
 (1) 警報設備
    駅には、自動火災報知設備を設け、防災管理室にその受信機を設けること。
 (2) 通報設備
 (ア) 駅には、次の設備を設けること。
  (a)  防災管理室と消防、警察、運転指令所、電力指令所、駅内各所及び関係隣接建築物との間で連絡できる通信設備
 (b)  防災管理室で統轄できる放送設備
  (c)  防災管理室と地上とを連絡するための無線用補助アンテナ。また、地下において乗換えを行う駅及び地下街と接続する駅の構内には、防災管理室及び地上と無線通話ができるための伝送路
 (イ) 駅間には、列車及びトンネルから運転指令所に連絡できる通信設備を設けること。
 (3) 避難誘導設備
 (ア) 駅には、次の設備を設けること。
 (a)  乗降場から地上までの異なる2以上の避難通路
  (b)  常用する電源が停止した場合、非常電源により即時に自動的に点燈し、床面において1ルックス以上の照度を確保することができる照明設備
 (c)  避難口誘導燈及び通路誘導燈
 (イ) 駅間には、次の設備を設けること。
  (a)  常用する電源が停止した場合非常電源によりすみやかに点燈し、避難の際通路になる部分の路面において1ルックス以上の照度を確保することができる照明設備。
(b)  非常電源による照明設備に近接した位置に、駅又はトンネル口までの距離及び方向を示す標識
 (4) 排煙設備
(ア)  駅及び駅間には、排煙を有効に行える設備を設けること。ただし、既設の地下鉄道においては、可能な限り設けること。
(イ)  駅には、乗降場と線路との間、階段、エスカレーター等の部分に、必要に応じて垂れ壁等の煙の流動を妨げるものを設けること。
 (5) 防火戸
    駅と他線の駅(同一の乗降場を使用するものを除く。)、地下街等との地下における連絡箇所には、防火戸を設けること。
 (6) その他
(ア) 駅には、空気呼吸器を常設すること。
(イ) 変電所には、原則として、専用の換気設備を設けること。
4 消火設備の整備
(ア) 駅には、次の設備を設けること。
(a) 消火器
(b) 屋内消火栓設備
(c) 連結散水設備又は送水口を附置したスプリンクラー設備
(d) 連結送水管
(イ) 駅間には、駅間が長い場合は連結送水管を設けること。
5 防災管理体制の整備
 防災に関する諸規程を整備するとともに、消防等防災関係機関との連絡等の緊急処理体制を整備すること。

 
鉄土第9号
 昭和50年2月14日
陸運局鉄道部長殿
鉄道監督局民営鉄道部土木電気課長

地下鉄道の火災対策の基準の取扱いについて

 地下鉄道の火災対策の基準については、昭和50年1月30日付け鉄総第49号の2により通達されたが、その取扱い及び解釈については下記の事項に留意のうえ、別紙によることとされたい。



1 「地下鉄道の新設」には、既に地上で営業している鉄道を今後地下に移す場合も含むものとする。
2 別紙6(3)において猶予されている2以上の避難通路は、乗降場を延伸又は拡幅する場合や他地下鉄道の新設により他地下鉄道の駅と当該駅と地下において連絡する場合などトンネルの大規模な改良を行う際には設けるものとする。

別紙
地下鉄道の火災対策の基準の取扱い
1適用等について
 (1)  「地下駅」とは、乗降場が地下にある停留場及び停車場(山岳地帯に設けられるものを除く。)をいう。
(2) 「既設」とは、昭和50年2月14日までに工事施行認可申請書を受理されたものをいう。
  但し、排煙設備についての「地下鉄道の排煙対策の基準」の適用については、昭和57年4月15日までに工事施行認可申請書を受理されたものは既設とみなす。
2第1項について
 (1)  内装は、下地を含めて不燃材料を使用するものとする。ただし、運転指令所、電力指令所、信号取扱所、防災管理室等の居室の床及び壁(床面からの高さが1.2メートル以下の仕上げの部分に限る。)の内装は、できる限り不燃化すればよいものとする。
(2) 不燃材料は、建築基準法第2条第9号に規定するものとする。
(3) 机、ロッカー等の調度品には、可燃性のものは努めて使用しないものとする。
(4) 変電所、電気室、機械室は、他の部分と耐火構造の床、壁又は防火戸で区画するものとする。
(5) (4)の防火戸は、建築基準法施行令第110条第1項に規定する甲種防火戸とし、ドアクローザ(JIS A 5544)等の自動閉鎖装置を有するものとする。
3第2項について
 (1)  防災管理室は、駅務室に併設することが望ましい。
(2)  防災管理室には、常用する電源が停止した場合、非常電源により点燈する照明設備を設けるものとする。
(3) 非常電源は、蓄電池設備又は自家発電設備とする。ただし、既設の地下鉄道にあつては、2回線受電設備も非常電源にあたるものとして、当分の間認めることとする。以下の非常電源についても同様とする。
4第3項(1)について
 (1)  自動火災報知設備の感知器の設置箇所は、乗降場、コンコース、通路(階段及び傾斜路を含む。)及び売店(移動可能なものに限る。)以外の箇所とする。
(2) 自動火災報知設備には、非常電源を附置するものとする。
5第3項(2)について
 (1)  駅内各所とは、居室、乗降場両端部及び駅が管理する区域内で連絡上主要な場所とする。
(2) 防災管理室から放送可能な範囲は、乗降場、コンコース、通路等駅が管理する区域とする。
(3) トンネルから運転指令所に連絡できる通信設備は、トンネル内に250メートル以内の間隔で設けるものとする。
(4)  通信設備及び放送設備には、非常電源を附置するものとする。
6第3項(3)について
 (1)  異なる避難通路とは、1の避難通路の歩行経路のすべてにおいて他の避難通路と重複しないものをいう。
(2) 避難通路(階段は、回り階段ではない構造のものに限る。)は、旅客が地上に安全に避難できるものとし、かつ、地上までの延長をできる限り短くするものとし、かつ、原則として乗降場から上ることのみにより地上に到達できるものとする。
(3) 既設の地下鉄道において異なる2以上の避難通路を早期に設けることが困難な場合は、できるかぎりすみやかに設けるものとする。
(4) 乗降場においては、(1)の異なる2以上の避難通路への出入口のうち、1の避難通路への出入口は乗降場の1未満から50メートル以内に、その他の避難通路のうちの1の避難通路への出入口は乗降場の他末端から50メートル以内に設けるものとする。
(5) 居室の各部分から避難口までの距離は100メートル以下とする。
(6) 「床面又は路面において1ルックス以上の照度を確保する」とは、床面又は路面のそれぞれの主要部分における照度が1ルックス以上であることをいうものとする。
(7) 避難口誘導燈及び通路誘導燈に関する技術上の基準は、消防法施行令第26条第2項の規定によるものとする。
(8) 駅間において避難の際通路となる部分は、避難に支障のない構造とするものとする。
(9) 標識は、避難の際通路になる部分の路面から高さが1.5メートル以下の位置に、間隔100メートル以内ごとに、識別が十分可能なように設けるものとする。
7第3項(4)について
 (1) 排煙設備は、当面次により設けるものとする。
 (ア)  排煙設備は、機械換気設備を兼用してもよい。
(イ) トンネルの縦断線形によっては自然換気口によってもトンネルの排煙効果が十分期待できる場合は、排煙機を設けなくてもよい。
(ウ) 電源を必要とする排煙設備には、非常電源を附置するものとする。
(エ) 排煙を有効に行える設備とは、別紙「地下鉄道の排煙対策の基準」に規定するものをいう。
(2) 煙の流動を妨げるものとは、天井面から50センチメートル以上下方に突出した垂れ壁その他これと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもの(感知器との連動により作動し、かつ、防災管理室からの遠隔操作によつても作動できるものを含む。)で、 不燃材料で造られ又はおおわれたものとする。なお、乗降場上の天井と線路上の天井との高さの差が50センチメートル以上ある天井も、煙の流動を妨げるものとみなすものとする。
8第3項(5)について
 (1)  防火戸は、建築基準法施行令第110条第1項に規定する甲種防火戸とする。
(2) 防火戸には、開き戸又は引き戸を使用するものとする。ただし、これらを設ける余地が無い場合には、シャッター(上下動するものに限る。)を用いてもよい。
(3) シャッターは、床面からの高さ 2メートルまでは、感知器との連動により降下し、かつ、防災管理室からの遠隔操作によつても降下できるものとし、さらに当該シャッターの設けられている場所で係員の操作により閉鎖する二段落しの構造とする。なお、シャッターの降下及び閉鎖の確認は、防災管理室で行えるものとする。
9第3項(6)について
 (1)  空気呼吸器は、JIS T8155、JIS T8156またはJIS M7601のものとし、旅客の救助、消火及び消防関係職員の案内等の作業に携わる係員数以上の数を常備するものとする。
(2) 既設の変電所で、専用の換気設備を設けることが困難な場合は、換気口に防火ダンパーを設けるものとする。
10第4項について
 (1)  消火器は、駅のうち消火活動上必要と認められる箇所に消防法施行令第10条第2項及び第3項の規定により設けるものとする。
(2) 屋内消火栓設備は、駅のうち消火活動上必要と認められる箇所に消防法施行令第11条第3項及び第4項の規定により設けるものとし、非常電源を附置するものとする。
(3) 連結散水設備又は送水口を附置したスプリンクラー設備は、乗降場、コンコース、通路(階段及び傾斜路を含む。)、居室(運転保安に関するものに限る。)、売店(移動可能なものに限る。)、 変電所、電気室及び機械室以外の箇所に消防法施行令第12条第2項及び第3項並びに第28条の2第2項及び第3項の規定により設けるものとする。
(4) 駅の連結送水管の放水口は、乗降場、コンコース及び通路で消火活動上必要と認められる箇所に設けるものとする。なお、連結送水管は消防法施行令第29条第2項の規定により設けるものとする。ただし、送水口を附置した屋内消火栓設備が設けられ、消火活動上有効であると認められる場合は、この限りでない。
(5) 駅間距離が長い場合とは、隣接する駅の乗降場に設けられた連結送水管の放水口相互間の距離が500メートルをこえる場合をいう。
(6) 駅間の連結送水管の放水口は、500メートル以下の間隔で設けるものとする。
なお、連結送水管は消防法施行令第29条第2項の規定により設けるものとする。
11第5項について
  防災に関する諸規程とは、建造物の防災に関する設計基準及び整備基準、防災関係機器等の設計基準、整備基準及び取扱基準、防災に従事する係員の駅務規程等をいう。

 
(別 紙)
地下鉄道の排煙対策の基準

 地下鉄道を設計する場合の排煙対策を次のように定める。
1用語の定義
(1)火点ブロック
   列車火災が発生した場合に、乗降場において煙が拡散する空間のうち、煙濃度が最も濃いと推定される一定の空間をいう。
 火点ブロックの設定は、次による。
    線路直角方向の断面は、図のとおりとし、図に示す以外の形式の駅構造については、図に示す考え方に準じたものとする。
 断面積は、煙の拡散する範囲の断面積から車両断面積(床下部分を含む。)を減じたもので、図の斜線の部分とする。
線路方向長さは、20mとする。
火点ブロックの容積は、次式により計算する。
   X=(Ao−Av)× 20   Ao=(Va−Vm)/L
   V : 火点ブロック容積(m3

Ao

: 線路直角方向断面積(m2

Av

: 車両断面積(床下部分を含む。)(m2

Va

: 乗降場部の火点ブロック設定断面で、ホーム有効長部分の全容積(m3

Vm

: Va内の柱、階段部等煙の拡散しない部分の容積(m3

L

: ホーム有効長(m)
(2)煙拡散容積
   コンコース階部において火災が発生した場合、煙が拡散する空間のうち、煙が滞留すると推定される空間の容積をいう。
 煙拡散容積の設定は、次による。
   高さは、コンコースの天井高さから2m減じたものとする。
    床面積は、柱等の煙の拡散しない部分の面積を減じたものとし、排煙設備が設置されている場合は、10分間の累積換気量を天井高さで除したものを床面積に加えるものとする。
    煙拡散容積は、次式により計算する。
     Vo=(Af−At+Vs/H) × (H−2)
   

Vo

: 煙拡散容積(m3

Af

: コンコース階部床面積(m2

At

: コンコース階部の柱等の煙の拡散しない部分の面積(m2

Vs

: 排煙設備の10分間の累積換気量(m3

H

: コンコース階部の天井高さ(m)
2乗降場階部の排煙対策
(1)排煙設備の必要換気能力
   乗降場に対する排煙設備の換気能力は、原則として、火点ブロック容積の大きさごとに、別表に規定する換気回数を確保するものとする。
 (2)排煙方式
   排煙方式は、第1の避難場所となるコンコース階部に連絡する階段等には、下降気流が流れる等、コンコース階部に煙が拡散するのを抑制できる方式とするものとする。
3コンコース階部の煙対策
 (1)必要煙拡散容積
    コンコース階部は、原則として1,050m3以上の煙拡散容積を確保するものとする。
 (2)駅設備の構造等
   コンコース階部の火災発生時には、乗降場階部への煙の拡散を抑制できる構造とするものとする。
 (3)乗換等大規模駅
   コンコース階部の煙対策は、駅と他線の駅(同一の乗降場を使用するものを除く。)との区画ごとに、上記の基準を満足するものとする。
4居室の排煙設備
  居室には、排煙機を設けるものとする。排煙機は、排煙口の開放に伴い自動的に作動し、かつ、 1分間に、120m3以上で、かつ、防煙区画部分の床面積1m2につき1m3(2以上の防煙区画部分に係る排煙機にあっては、当該防煙区画部分のうち床面積の最大のものの床面積 1m2につき2m3)以上の空気を排出する能力を有するものとする。その他構造等については、建築基準法施行令第126条の 3の規定に準じるものとする。
5駅務員の対応等
  火災発生時の駅務員等が、煙対策設備を適確に操作できるようにするとともに、旅客の避難誘導を適切に行うことができるよう教育・訓練の実施等、緊急時の体制を整備するものとする。

図 火点ブロック設定のための線路直角方向断面の範囲

(A)1線ホーム


(考え方) 煙は、全断面に拡散するものとする。


(B)2線島式ホーム


(考え方) 煙は、熱による上昇気流により隣接ホーム上及び反対側軌道部に拡散するものとする。


(C)2線相対式ホーム

(考え方) 火災列車と反対側のホームは、軌道部分より天井が低いため煙は拡散せず、隣接ホーム上及び軌道部にのみ拡散するものとし、入線する火災列車により設定される断面のうち小なる断面とする。
(例:図において、ホーム幅がL1≦L2の場合、斜線の部分を設定範囲とする。)
(注)煙は、斜線部分に拡散するものとする。

別 表
火点ブロック容積による必要換気回数
火点ブロック容積m31時間当り
必要換気回数
火点ブロック容積m31時間当り
必要換気回数
255以下50446 〜 460 27
256 〜 26049461 〜 476 26
261 〜 26648477 〜 492 25
267 〜 27147493 〜 509 24
272 〜 27746510 〜 528 23
278 〜 28345529 〜 547 22
284 〜 29044548 〜 568 21
291 〜 29643569 〜 590 20
297 〜 30342591 〜 613 19
304 〜 31141614 〜 638 18
312 〜 31840639 〜 665 17
319 〜 32639666 〜 693 16
327 〜 33538694 〜 723 15
336 〜 34337724 〜 756 14
344 〜 35336757 〜 790 13
354 〜 36235791 〜 827 12
363 〜 37234828 〜 868 11
373 〜 38333869 〜 909 10
384 〜 39432910 〜 955 9
395 〜 40631956 〜 1005 8
407 〜 418301006 〜 1056 7
419 〜 432291057 〜 1113 6
433 〜 445281114以上 5
(注)端数は切上げる。