鉄運第136号
 昭和32年12月18日
陸運局長殿
 鉄道監督局長
電車の火災事故対策に関する処理方の一部改正について
  電車の火災事故対策については、昭和31年6月15日鉄運第39号で通達したが、その後における火災事故にかんがみ、地下を運転する車両に関して不十分な点があるので、 本年1月25日鉄運第5号で通達した電車の火災事故対策に関する処理方についての一部を左記のとおり改正するから、管下関係業者を指導されたい。
第1号(車両を新製する場合)中(1)を次のように改める。
 (1) イ 主として地下線を運転するもの、地下線に乗入れ運転するもの及び別に指定する路線で始終端駅に地下乗入れ運転するものは、別紙実施要項(A−A様式)により施行すること。
  長い随道又は多数の随道のある区間を運転するもので、別に指定する路線に使用するものは、別紙実施要項(A様式)により施行すること。
 (2) 前号以外のものは、極力別紙実施要項(A様式)により施行すること。ただし、屋根、内張及び床面は、金属又は不燃性の材料としなくてもよい。
第2号(車両を改造する場合)中(1)を次のように改める。
 (1) イ 主として地下線を運転するもの、地下線に乗入れ運転するもの及び別に指定する路線で始終端駅に地下乗入れ運転するものは、別紙実施要項(A−A様式)に準じて施行すること。
ただし、貫通路の幅は、車体更新の時期まで有効幅550ミリメートル以上であればよい。
  長い随道又は多数の随道のある区間を運転するもので、別に指定する路線に使用するものは、別紙実施要項(A様式)により施行すること。
第3号の次に別紙電車の火災事故対策実施要項(A−A様式)を加える。


(別紙)電車の火災事故対策実施要項(A−A様式)
項   目要   項
車体構造全  般
屋  根

 
天  井
内  張

外  板
座  席
 できるだけ木材等の可燃性材料を使用しないこと。
  袈空線式のものは金属とし、その上を損傷のおそれのない材料で電気的に絶縁すること。
  露出金具は車体と電気的に絶縁するか又は電気絶縁材料で覆うこと。
 金属等とすること。
 金属等とすること。
 下面全部を金属板張りとし、室内に火気が進入しないよう留意すること。
 金属等とすること。
 表張りは不燃性のものとすること。
貫   通   路
 全車貫通式とすること。ただし、永久前頭車の前端は貫通式としなくてもよい。
 連結相互の車両の貫通路間には渡り板及び幌又は旅客が貫通路を安全、かつ、危険がなく進行できる設備をすること。幌は不燃性のものとすること。
 貫通路の見付幅は700ミリメートル以上とすること。
 貫通路の扉を設備する場合
乗務員室のない側の貴通路扉は、引戸式又は前後両方向に開放可能な自由開き戸式とすること。
乗務員室のある例の貫通路扉が内聞き戸式の場合は、その手前に乗務員董と客室とを仕切ることのできるもので、連結側となったときに随時開放可能のものであること。
主回路及び電孤、電熱発生機器の防護等
 主回路(母線を含む。)用ヒューズは、できるだけ集電装置に近く設けること。
 電気絶縁した耐熱性の防護板を設備すること。ただし、電弧又は電熱を発生する機器と床等とが400ミリメートル以上離隔している場合は、これを省略してもよい。
 電弧、電熱を発生する機器に近接する箇所には、可燃性材料を使用しないこと。
 電線の被覆は難燃性材料を使用のこと。
 500ボルト以上の電気配線は引出部以外においては、電線管に納入するか又はこれと同等以上の効果のある配線をすること。
予   備   灯 設備すること。
通  報  装  置 非常の際、旅客が車両を停止させることのできる装置又は旅客から乗務員に通報することのできる装置を設備すること。ただし、乗務員の乗務している車両であって旅客が乗務員に容易に通報できる構造のものは、これを省略してもよい。
扉開放コック及び
その取扱の標示
 地下線専用の車両には標示しないこと。
 地上を運転する車両には、永久的な標示をし、地下に乗入れした場合には地下で旅客が操作しないように標示に「ただし書」をすること。ただし、乗務員が常時その場で操作できるものは、これを省略してもよい。
消   火   器 少くとも初期消火に充分能力のあるものを備えつけること。
そ   の   他
 車内には停電時においても使用できる放送装置を設備すること。
 床下の主要機器には、その機器名を明記すること。