鉄運第5号
 昭和32年1月25日
陸運局長殿
 鉄道監督局長
電車の火災事故対策に関する処理方について
  電車の火災事故対策については、昭和31年6月15日鉄運第39号で通達したところであるが、電車の構造及び機器の整備は、建設規定及び車両整備基準を骨子として、次の各号の要領により処理されたい。
  なお、これらの工事に際しては、作業過程において、事業者自体の厳密なる監督が行われるよう管下関係業者を指導されたい。
車両を新製する場合
(1)イ  主として、地下線を運転するものは、別紙実施要項(A様式)により施行すること。
  地下線に乗入れ運転するもの及び長い随道又は多数の随道のある区間を運転するもので、別に指定する路線に使用するものは、別紙実施要項(A様式)により施行すること。
(2)  前号以外のものは、極力別紙実施要項(A様式)により施行すること。ただし、屋根、内張及び床面は、金属又は不燃性の材料としなくてもよい。
車両を改造する場合
(1)イ  主として地下線を運転するものは、別紙実施要項(A様式)により施行すること。
  地下線に乗入れ運転するもの及び長い随道又は多数の随道のある区間を運転するもので、別に指定する路線に使用するものは、別紙実施要項(A様式)により施行すること。
(2)  前号以外のものは、別紙実施要項(B様式)により施行することを最低の線とし、できるだけ高度のものとするよう施行すること。ただし、最高速度毎時40キロメートル以下のものの木製外板及び木製天井(難燃性の塗料を塗布した場合)並びに大都市及びその周辺以外の地域にあつて 最高速度毎時40キロメートルをこえるものの木製外板は、車体更新の時期までそのまま使用してもよい。
(3)  (1)及び(2)の本文に係る改造工事は、各事業者において年次計画をたて、大都市及びその周辺の地域のものは、概ね 3年以内、その他のものは、概ね6年以内に完了するものとする。
車両を譲り受ける場合
  車両を譲り受ける際には、2の(1)及び(2)に準じて改造すること。


(別紙)電車の火災事故対策実施要項(A様式)
項   目要     項
車体構造屋   根
天   井
内   張

外   板
 金属又は不燃性の材料とすること。
 架空線式のものは屋根の上部を電気的に絶縁すること。
 金属又は不燃性の材料によりだき合せた構造で延焼のおそれのない箇所には可燃性の材料を使用してもよい。
貫    通    路
  少なくとも二両間には貫通路を設備すること。
  連結相互の車両の貫通路間には渡り板及び手すりを設備すること。ただし、幌を設備した場合は手すりを設備しなくてもよい。
  貫通路の有効幅は550ミリメートル以上とすること。ただし、軌間1067ミリメートル未満のものは、これを400ミリメートル以上としてもよい。
  貫通路の扉を設備する場合には引き戸式とすること。ただし、常時開放し、その扉を乗務員室の隔壁として忍錠により鎖錠される両口兼用開き戸式のもの及び前後両方向に開放可能な自由開き戸式のものはこの限りでない。
電孤、電熱発生機器の防護等
  電気絶縁した耐熱性の防護板を設備すること。ただし、電弧又は電熱を発生する機器と床等とが400ミリメートル以上隔離している場合は、これを省略してもよい。
  被覆電線の処理に留意すること。
  電弧又は電熱を発生する機器の容量、性能及び取付処置が適正であること。
予    備    灯  設備すること。
通  報  装  置  非常の際、旅客が車両を停止させることのできる装置又は旅客から乗務員に通報することのできる装置を設備すること。ただし、乗務員の乗務している車両であって旅客が乗務員に容易に通報できる構造のものはこれを省略してもよい。
扉開放コック及び
その取扱の標示
永久的な標示をすること。ただし、乗務員が常時その場で操作できるものはこれを省略してもよい。
第三軌条式のものは標示をしないこと。
消    火    器 備え付けること。



(別紙)電車の火災事故対策実施要項(B様式)
項   目要   項
車体構造天   井
外   板
  金属又は不燃性の材料とすること。
  電弧又は電熱を発生する機器の上部床下には鉄板を張ること。
貫    通    路
 乗務員の乗車していない車両には少なくとも二両間に貫通路を設備すること。ただし、構造上はなはだしく困難な場合又は手動扉の場合は設備しなくてもよい。
  貫通路が開戸式のものは開放して鎖錠すること。
電孤、電熱発生機器の防護等
 電気絶縁した耐熱性の防護板を設備すること。ただし、電弧又は電熱を発生する機器と床等とが400ミリメートル以上隔離している場合は、これを省略してもよい。
 被覆電線の処理に留意すること。
 電弧又は電熱を発生する機器の容量、性能及び取付処置が適正であること。
予    備    灯  設備すること。
通  報  装  置  非常の際、旅客が車両を停止させることのできる装置又は旅客から乗務員に通報することのできる装置を設備すること。ただし、乗務員の乗務している車両であって旅客が乗務員に容易に通報できる構造のものはこれを省略してもよい。
扉開放コック及び
その取扱の標示
  永久的な標示をすること。ただし、乗務員が常時その場で操作できるものはこれを省略してもよい。
消    火    器  備え付けること。