鉄運第39号
 昭和31年6月15日
陸運局長殿
鉄道監督局長

電車の火災事故対策について

  南海電気鉄道株式会社高野線において5月7日発生した電車火災事故の概況については、さきに通知したとおりであるが、 この種の事故にかんがみ、電車の構造その他機器の整備、取扱について次に各号の要領により管下関係業者の注意を喚起するとともに、これが計画、実施について積極的な指導をするよう配慮されたい。
 電車を新製又は改造する場合は、極力不燃性の構造とすること。特に木製の電車については、可及的すみやかに改造するよう計画をたてること。
 連結運転をたてまえとする電車には貫通路を設けること。
 電弧又は電熱を発生するおそれのある機器は、電線又は可燃性の床、壁等から離隔し、その間に耐熱性かつ電気絶縁性の防護板を設けること。
 予備灯を整備すること 。
 電車には、非常の際、旅客から乗務員に通報できる装置を設備するよう計画をたてること。
 自動戸閉装置の扉開放コックの所在場所及び扉開放コックの取扱については、旅客への標示を常時客室内に掲出して、非常の際に誤りないよう措置すること。
 地下又は随道のある区間に使用する電車には、各車両ごとに消火器を備え付けること。
 毎日検査の際には、集電装置の降下具合及び自動戸閉装置の扉開放コックによる扉の操作具合並びにハンドスコッチ及び消火器の完備等非常の際に必要とする機器の整備に留意するとともに、乗務員においても同種の点検を励行すること。
 火災その他非常の際における旅客誘導、車両転動防止、後方防護等臨機の措置については、遺憾のないよう乗務員その他関係係員を定期的に指導訓練すること。