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1. | 引張力 | 700系電車の引張力は105km/h程度までは一定で(引張力から求めた加速度は2.0km/h/s弱)、その後は低下して行く。(そのようになるように電動機の速度、トルクを制御している) |
2. | 走行抵抗と 均衡速度 | 走行抵抗は速度の2乗に比例して増加し、340km/h程度で引張力と交わる。この引張力と走行抵抗の交点の速度を「均衡速度」といい、加速力は0になるのでそれ以上速度は上がらない(下り勾配ではもっと上がるが)。 この走行抵抗は「明かり」、「平坦線」区間のもので、(長い)トンネルに入ると更に大きくなり、上り勾配では勾配抵抗も加わる。 |
3. | 加速力 | 加速力は(引張力-走行抵抗)で、それを加速度に変換した加速度曲線は当然均衡速度で0になっている。 |
4. | 加速余力 | 700系の最高速度は285km/hだが、その速度で加速度は0.3km/h/s弱有る。 この運転最高速度で残っている加速度を加速余力といい、0.2以上確保するのが一般的。これがないといつまでたっても最高運転速度に達しない。 |
5. | 勾配区間走行 | 例えば12‰の上り連続勾配での加速度を考えると、上り勾配は減速させる方に働き、その減速度は 12÷30≒0.4km/h/sとなる。12は勾配値(‰)、30は単位換算係数。 その結果、加速度曲線はこの値だけ下方にシフトし、概ね260kmで加速度が0になりそれ以上速度が上がらない。実際の勾配はある距離ごとに上り下り変化するので複雑だが、新幹線では特別な場合を除いてはあまり大きな勾配を付けないようにしている。 |
6. | 勾配起動 | また、上り勾配で停止して再起動する場合、例えば30‰だと加速度は30÷30≒1km/h/s減ることになる。最近の新幹線電車の起動加速度は通常1.6km/h/sなので、0.6km/h/sの余力があり起動は可能。 しかし、たとえば、電車が4両ユニット構成(4両1組で機能する)の場合、16両だと4ユニットあるので1ユニット故障して解放したとすると起動加速能力は4分の3の1.2km/h/sになるので30‰上り勾配で何とか起動はできるが加速力が不足してしまい、このような急勾配をなくすか車両のユニット構成を2~3両ユニットにするなどの対策が必要になる。特別に車両の起動加速度を上げるような構造、取り扱いにすることもある。 |
車両の出力から | 車両の出力がなければ話にならない。特性曲線からは、450kWクラスの電動機を積めば400km/h運転は可能になるが、最高速度に達するまで約26km、停車するまで約13km程度走行するので駅間が相当広くないとメリットがない。もっと出力を上げるともっと出る。しかし、変電所は大丈夫? |
粘着係数 | 走行抵抗は速度の2乗に比例して増加するので摩擦係数(μ)が下がる高速域では空転を起こし加速できなくなる恐れがある。ブレーキの時のμパターに従うとすると、400km/h程度で交差しそう。しかし、走行抵抗は車体断面の縮小等で少しは下げられるし、増粘着剤の散布や必ず空転することになるわけでもない?ので更に多少の速度向上は可能。 |
環境面 | 今一番厳しいのが騒音対策。日本には標準点(路線中心から25m離れで地上高さ1.2m位置)で70(住宅地)又は75ホン以下という新幹線の環境基準が有り、防音壁等の対策でかなり減ってきたが完全には隠しようのないパンタグラフ等の速度依存性の高い空力音対策がほぼ限界に近づきつつある。この面では最高速度は300km/h前半か。 更に、トンネル出口に発生するトンネル微気圧波による「ドン」という音とかが問題になって、トンネル緩衝工や車両先頭部の勾配変化率を一定にするなどの対策がとられている。最近の先頭車は「馬面」になってきて写真写りが良くないのはこのせい?。 |
走行安定性 | 台車の構造や数値解析の進歩により台車だ行動の限界速度は向上してきたが、400km/h以上の高速域で軌道条件、車両長期走行による特性の変化等に対しても余裕があるかは走ってみないと分からない。 |
集電性能 | パンタグラフで架線と接触し、そこから動力電源を集電しているが、高速化になると離線が大きくなる可能性がある。高張力化、材質の改善等が進められているが、400km/h以上の高速域でも安定した集電ができる必要がある。 |